11/13/2019

心中天網島





 昨日見せていただいた文楽の演目は「心中天網島」という近松のものでした。
なんせはじめてで色々と心配ごとがありましたが
チケットを下さったSさまやネットでのアドバイスを参考に臨んだ結果、
大変充実した時間を過ごすことが出来ました。

まず、私のように浄瑠璃に暗いものは、
開始時間までにロビーにてパンフレットを買うこと。 
上の画像のものがそれです。¥700(だったと思う)で内容は盛り沢山!

もうひとつおすすめなのがイヤホンガイドを借りる事。
舞台をより理解するのに大変助けられました。

4時間の間に30分の休憩が入るので、お弁当とお茶も買っておきます。
トイレは座席のそばの扉の前にあったので、安心。
全て準備し、さあ、いよいよ始まります・・・!




 最初に太夫、三味線の登場。
私たちの座席のすぐ前だったので、太夫の語りの臨場感は凄かった・・・。
その横で、太夫を支える三味線の音色。
太夫の熱い語りとは逆に、シンプルで削ぎ落とされた音色。
対照的な組み合わせに惹き込まれ、これだけでも目が離せなかった。

そしておもむろに人形の登場。
実物見ると、顔は小さくてとてもスタイルが良いのです。
お顔を出した人形遣いさん(主遣い)に二人の黒子さんの 合計3人で
一つの人形を操ります。
オペラグラスで人形の細かな表情やしぐさを楽しみました。
三人の息の合った動きも素晴らしい。
そして主遣いさんの表情にも自然と目が行きます。
人形に合わせてご自身も表情を表されるのかと思いきや、あくまで冷静。
それは、感情を奥に押しとどめた技なのだと感じました。
あくまで主役は人形、なので人形遣いは目立たぬように・・・
そういうことなのでしょうか。

太夫・三味線・人形遣いの妙。
すごいな、と思います。





 話の筋は、こちらでどうぞ

 会場の女性たちは皆、治兵衛、Go to hell!
と思っていたことでしょう。もちろん私も・・・。
女房おさんはこれだけ出来た人はいないだろう、と思いますが
心中前の最後の小春の台詞が、一番心に残りました。

「死に場はいづくも同じことゝは言ひながら、私が道々思ふにも二人が死顔並べて、小春と紙屋治兵衛の心中と沙汰あらば・・・(中略)義理知らず偽り者と世の人千人万人より、おさん様一人のさげしみ、恨みねたみもさぞと思ひやり、未来の迷ひはこれ一つ」
誰に何をいわれてもいいけれど、
ふたりが並んで死んだらおさん様に軽蔑されるのが恥ずかしい・・・。




 帰宅してからゆっくりと楽しんだのが、パンフレットです。
これがなかなか秀逸なのでした!
演目にまつわる豆知識がてんこ盛り。しかもいちいちが面白くて・・・
物語の舞台が、当時の地図上で 示されているのも興味深い。
どこも知らない場所ではないから、今度通る時はじっくりと観察してみよう。





 人形にどんな頭(かしら)が使われているかも分かります。




チケットを下さったSさんは、竹本三輪太夫さんと古いご友人。
(橋本前知事と文楽の補助金の時に渡り合った方だそうです。)
最後の道行き名残りの橋づくしでは、その美声が一際光っておいででした。
おもわず母と顔を見合わせ、にっこり。

皆さん、厳しい修行を積まれた方たち。
そんな技の集結した舞台ですが、押しつけがましくなく
終演後には何やら爽やかな気分。

そして、文楽は後からじわじわくるのだなぁというのが一日経った実感です。
まずは図書館で本を借りて来よう・・・。
そして、またきっと足を運ぶことと思います^^

素晴らしい経験でした。