6/07/2014

アンバランス





 ふと、10年ほど前に起こったことを思い出しました。


それは、朝食を食べていた時のことです。
インターホンが鳴り、「こんな時間に?」と思いつつ出てみると、
 モニターには若い女の子の姿。

「電話貸してください・・・。」

???
意味が分からず、ぼんやりしていると、今度は怒ったような調子で
「カバン盗られたんです!!」






 事情を呑み込み、急いで出ると、そこには泣きじゃくっている女の子。

すぐに家に入れ、とりあえず座らせて、警察に電話をかけました。
「お家にも電話する?」と、家にも連絡をさせ、
ただ泣くだけの女の子に、「可哀そうにねぇ、怖かったねぇ・・・」とオロオロ。

ほどなく、警察が到着。


そこでお巡りさんが女の子に状況を聞くには、
大学に行く途中に、自転車の前かごに入れていたバッグを
通りすがりの男に盗られたんだそう。

「どんなバッグ?」と聞かれ、答えたのが 驚くことにエルメスのバッグ!

そして、バッグの中の財布の所持金は¥2000・・・


こんな子供みたいな子がエルメスのバッグを自転車の前かごに入れ、
大学に通ってることもアンバランスだし、
そんな高級バッグを持ちながら、¥2000の持ち合わせというのもアンバランス。


その可哀そうな女の子は、結局こちらには何のお礼の言葉も発せず
ただエルメスのバッグを盗られたことの悲しみに暮れながら、
とりあえず 我が家の前に自転車を置いて
お巡りさんと一緒に去って行きました。

・・・あ、お巡りさんは「ご迷惑おかけしました。」とおっしゃったけれども。
 

 そして、自転車は警察の帰りに乗って帰ったのでしょう、
いつの間にやら無くなっていました。








大したお世話をした訳では無いのですが、
きっとそう遠くない場所に住むお嬢さんでしょう。

お礼の言葉も言えないのに、数十万もするバッグは持っているという
これまたアンバランス。

高級品を持ちたいなら、中身も備わっていたいものだし、
まず、大学生には似合わぬ。

自分に自信があれば、どんなバッグを持っていてもよかろうに・・・。
 若いというだけで、なんだって似合うのになぁ。

 


あぁ、そんなこともあったねぇ、と珈琲を飲みながら
オバサン達は思い出した今朝だったのでした。