ものを買うことには、ある程度勢いのようなものが必要な時もありますが、
一度手にとってもほとんどのものは、
棚に戻す確率の方がはるかに高い私。
特に本は、
まず図書館、それでも欲しければ古本購入という
自分なりの方程式があるのですが、
それを崩していきなり本屋でレジに持って行ってしまった本がこれです。
「作家の家」 コロナブックス
15人の著名人の家が掲載されています。
そのどれもが独特の風合いのある、こだわりの家。
表紙はちなみに、有名な鎌倉の澁澤龍彦邸玄関。
すごいのは、全て各家の図面が見られること。
他、有元利夫や種村季弘など、嬉しい人選の中、
写真家の植田正治の家もありました。
実は私は、植田正治氏の奥さんである紀枝さんのファン。
初めて本の中でお目にかかった時、
こんなに可愛らしく可憐な人がいたんだ・・・と
ボーゼンと釘付けになってしまいました。
(*この写真の本は、「作家の家」ではありません。)
1916年生まれの紀枝さんは、毎朝卵白で顔を洗い、革靴に袴、頭にはリボンの
文学や抒情詩に憧れる女学生だったそう。
結婚後は、好きなことしかやらない、子供のような夫を
ずっと支え続けました。
けれど、忙しい一日の合間に、デミタスカップで珈琲を飲んだり
4人の子供の誕生日には、フルーツケーキを焼き、
夫の留守には、メロンにブランデーをひとふり、砂糖をまぶしてこっそり食べる、
ハイカラで茶目っ気のある人でした。
うん、そのなんともいえない悪戯っぽさが
写真に写し出されています。
そこが、とても魅力的なのです。
67歳で紀枝さんは亡くなるのですが、その後、
「妻が使ったものを見るのはかなわない・・・」と
夫は、ミシンも鏡台も2階にしまいこんだということ。
それが、写真を見つめているだけで
心身ともに、本当に可愛い人だった紀枝さんが偲ばれ
その妻を無くした夫の 辛い感情が伝わってくるようで、
こちらも、胸にせまるものがあります。
そうそう、この2枚の写真の載った本も、
以前、迷わずレジに持って行った数少ない本。
「作家の家」には、二人が生涯過ごした築100年の町屋も、
覗き見ることが出来ます。
この作家シリーズ、
「作家の猫」は以前母がクリスマスの本の交換に選び、
他にも「作家の酒」、「作家の食卓」「作家の犬」・・・
一番気になるところでは、「作家のおやつ」なるものも!
三島由紀夫に坂口安吾、澁澤龍彦に森茉莉のおやつ・・・
これは是非、手にしたい一冊だわ・・・。
追記を。
パートナーから指摘があり、気付きましたが、
紀枝さんは、なんと我が祖母と同じ年にお生まれなのだそう!
ご存命なら、95歳ですね。
あぁ、なんだかさっきよりずっと、近くに感じられます・・・。