このところ、オンラインでもオフラインでも
クリスマス会のための本を探す毎日。
けれど、本屋というものには、すぐに本来の目的を忘れて
脱線してしまうのが常です。
そうやって先日、欲しかった装丁の本が安価で出ているのを発見!
これは自分へのクリスマスプレゼントにしようと、
すぐさまカートへ。
それぐらい、バチは当たらんだろう!と。
もちろん、古本です。だって絶版ですから。
装丁は池田満寿夫。
箱入りで、帯もあったけれど、それは外してしまいました。
帯というものは、あまり好きではないのです。
森茉莉の本で、初めて読んだのは この「甘い蜜の部屋」。
その時の、頁をめくるたび訪れる、濃厚で甘いワインを飲むような気分は
忘れられません。
そして、それは何度読み返しても、そう。
小池真理子氏が、森茉莉の文章について
まさにぴったりのことを書いています。
森茉莉の文体の豊饒さは群を抜いている。
言葉のすみずみに、何やら無数の美しい、愛らしい魔物がひそんでいて、
魔物たちが互いにくすくす笑いをしながら手をつなぎ、歌を歌っているかのようである。
小説はどれも、耽美の極みですが
それでいて、エッセイはまた辛辣で我儘で、面白いのです。
中でも、 ドッキリチャンネルの中の田中邦衛についての描写が凄い!
あのもみあげを長くした田中邦衛は
三百年続いた西班牙(イスパニア)の貴族の、
血族結婚のために頭の悪くなった城主に仕えているソメリエ(酒の係り)で、
城主の食事のために地下室に下りていって、
葡萄酒の壜の蜘蛛の巣を払って持ってくる、そんな感じである。
飄々としているが上の方の家臣たちより城主を思っ
ている、
そういう男の感じだ。
また、山田五十鈴の描写も・・・
山田五十鈴を歌舞伎座の食堂で見かけたことがある。
コンパクトを取出し、地色の小麦色が透けて見える綺麗な顔をはたいていた。
その姿は、信長がどこかの農家に雨宿りをして、
床几に腰かけて持薬を口に放り込んでいる姿もかくやと思われる立派なものだった。
久しぶりに、またゆっくり読んでみたくなりました。
でもまだ、肝心の本が選べずにいます・・・