優雅に扇を持つ、手のブローチ。
扇が花かごだったり、手紙だったり、誰かと握手していたり・・・
パターンは数々ありますが、
友情や愛情のシンボルとしての、古くからのモチーフです。
私の持っているこのブローチは
アンティークでは無く、インポートの現代のデザイナーのものですが
手首にさり気なくタッセルがあしらわれていたりして
気に入っています。
やっと読み終えた、分厚い上下巻の「抱擁」
英国の女流作家バイアットのブッカー賞を受賞した長編小説。
物語の筋は、100年前の時代を生きた詩人二人の秘められた恋を
研究者の男女が解き明かしていくというものですが、
その中に、このヴィクトリアンハンドモチーフのブローチが、ほんの一瞬登場します。
それは「忘れな草でふちどられた握手したブローチ」で
素材はジェットという木の化石ですので、漆黒ですが
他にも、死者の髪を細く編み、
ブレードのように使ったアクセサリーの描写もあり、
興味深く読みました。
(ちなみにこの亡き人の髪を使ったアクセサリー、
海外で売っているのをよく見ますが
絶対欲しいと思えない・・・。)
膨大な古い手紙や詩がほぼ半分を占めるこの本、
正直、読むよりも、映画で見る方がいいかもしれません。
グウィネス・パルトロー主演で、2001年に既に映画化されているようです。
この翻訳本は、残念ながらもう絶版。
そして、もう一冊の図書館の本は
鷗外の長男、解剖学者の森於菟の随筆で
タイトルも衝撃的な「耄碌(もうろく)寸前」。
森於菟は、兄弟の中で一人だけ鷗外の先妻の子で
長く外に預けられて育てられたこともあり、
溺愛された森茉莉とは全く逆の、陰の印象が強かったのですが
飄々とした文体に、ホッとするものがありました。
三男である類の随筆も以前読みましたが
正直、あまり好ましく思えなかったのは、私が森茉莉贔屓だからかもしれません。
生き残った鷗外の子供4人は、こうやって皆、文章を書いていますが
父と渡り合えるのは、茉莉だけだとつくづく思います。
読了記録
A.S. バイアット 「抱擁」 図書館の本
森於菟 「耄碌寸前」 図書館の本