人形を作っていると、日々人形好きな方達と知り合う機会があります。
皆様、それぞれにディープな人形愛好家でいらっしゃいますが、その好みはさまざま。
「絶対にブリュが一番!」と、特定の人形を徹底的に熱愛される方、
ミレットなど、小さめな人形を好まれる方、
とにかく衣装がゴージャスでなければならない方、
市松人形のみを蒐集される方・・・。
私は自分が作る立場であるので、どの人形も可愛くなっていく段階をじっくりと見ることが出来るためか、フランスの人形もドイツの人形も市松人形も、どれも平均的に好きです。
自分の子供のような存在ですし。
けれど、実はずっとずっと、苦手だった人形があります。
それはなんと、ジュモー。
ジュモーといえば、人形の王様(女王様?)と言ってよいほど、ビスクドールの世界では大変重要な存在です。
けれど、悲しいことに、なかなかジュモーの良さを感じることが出来なかったのです。
あの、くっつきそうな眉毛、主張する眼、やや角張った輪郭・・・
どれも「濃い」・・・。
なので、自分でもなかなか納得のいくジュモーを製作することが出来ませんでした。
今思えば、その人形の良さが理解出来ないのなら、良い人形を作ることは不可能だったのかもしれませんね。
表情の優しいロングフェイス・ジュモーに限っては、そんな拒否反応無く作っていましたが・・・。
それがある時、アンティークのジュモーを見てから、想いが変わったのです。
やっぱり眉毛はくっつきそうだし、眼も恐ろしいほど出っ張ってるし、「濃い」印象であることには変わりはありません。
けれどそれ故の存在感が、実際に目の前にした時に、私を強く惹きつけたのです。
それは、衝撃的なくらいに・・・。
ジュモーは、本当にすごい人形です・・・。
そんな人形を、いつか作りたい。その想いは、私の中にしっかりと刻み込まれました。
グリーンのドレスは、昨年作ったエミール・ジュモー。
下は、ロング・フェイス・ジュモー。シルクですが、ざっくりとした生地で衣装を作っています。
もちろんどちらも、ウィッグに至るまでオリジナル。
こんな体験を重ねて、最高の本物のビスクドールに近づいて行きたいです・・・。