5/13/2009
私の祖母
私の母方の祖母は、93歳。
小さい頃から、お盆とお正月にしか会うことはありませんでしたが、10年ほど前から母と一緒に暮らすようになり、より身近な存在となりました。
数年前から徐々に物忘れがひどくなり、夜中に誰か来たと勘違いして、玄関から転んで骨折するということもあって、家族で話し合い、4年前から老人介護施設に入居しています。
週に1度は面会に行くのですが、寂しくないように、入居したての頃に、赤ちゃんの抱き心地の人形をプレゼントしたことがあります。けれど、その時はあまり興味の無い様子で、母も私も、「まぁ、人形やしなぁ・・・まだおばあちゃんも、しっかりしてるってことやな。」と、受け流していました。
ところが、最近祖母に会いに行くと、その人形が祖母のベッドに寝ていたり、食事の時は食堂に一緒に連れて行ったり・・・職員さん曰く「育てていらっしゃるんですよ。」ということ。
母などは、最所はショックを受けていたのですが、この頃はそんな祖母の様子についこちらも笑顔を誘われて、優しい気持ちで受け止められるようになりました。
何より、祖母の表情が豊かになった気がするのは、人形が、今の祖母の守るべき大切な対象だからなのでしょう。
祖母だけの時間の流れの中で、のんびりと世話をしています。
先日、祖母の部屋に遊びに行くと、祖母は一人でテレビを見ていました。いつもそばにあるはずの、赤ちゃん人形は見当たりません。
「おばあちゃん、赤ちゃんは?」 と聞いても、祖母は、はて?という表情。
食堂に忘れたのだろうと、祖母と一緒に見に行くと、案の定、赤ちゃんはそこにいました。
けれど、入居されている他のおばあさんが抱っこしていたのです!
それに気づいた時、私は心の中で、「トラブルになったらどうしよう・・・!」と、祖母と部屋に引き返そうと思ったのですが、既に祖母は抱っこされている赤ちゃんに気付いた後で、そのおばあさんのそばに歩いて行ってしまいました。
赤ちゃんを抱っこしていたおばあさんは、ちょっと気まずそうに 「置いてあったから、可哀そうに思って・・・。」とおっしゃいました。
すると祖母は、にっこりしながら、両手を合わせて、曲がった腰でお辞儀をしたのです。
「どうもありがとう。」
そう言って、赤ちゃんを受け取る祖母と、「気をつけてな。」と、大切に赤ちゃんを手渡すおばあさん。
赤ちゃんを真ん中に、座って、楽しくやり取りする二人。
二人にとっては、この赤ちゃんは生きているのです・・・。
こんなに優しい気持ちに心が満たされるのは、久しぶりでした。
素敵に歳を重ねているとは、こんなことなのでしょうね。
それに比べて、赤ちゃん人形が取り合いになったら・・・などといらぬ心配をしてしまった自分(恥)。
祖母が母と一つ屋根の下に暮らすようになった時、まだ幼稚園だった娘が、園の七夕で、「かみさま ひいおばあちゃんをありがとう。」と書いたことがありました。
そんな、どこか共通するピュアな気持ちを思い出した、一日。
きっと、祖母についての忘れられないエピソードになるだろうな。