部屋に香りを漂わせたくて、ひと枝鋏を入れる時
必ず棘は、指に痛みを残します。
一輪の薔薇の、心がそこにあるのでしょうか・・・。
その見た目の美しさはもちろんですが
香りや棘も、薔薇の魅力の一つ。
むしろ、そんな茨の部分に惹かれたのが
中井英夫
植物学者を父に持つ中井英夫は
自宅の庭を「流薔園(るそうえん・精神病院として、小説にも登場)」と名付け
自らを流薔園園長と名乗り、
作品にも
薔人(ばらと)という登場人物があったり
薔薇への供物
薔薇幻視
流薔園変幻
薔薇にまつわるものは数知れず・・・。
中井英夫の薔薇は、美しさとそれを上回るかの毒と儚さを感じさせます。
「咲き誇る薔薇の地面の下の、根に絡み締め付けられて息絶えたい。」
そう願う登場人物は、きっと作家本人なのでしょう。
読書の秋ということで、本についての独り言が続きました。
冬がやって来ると、
ベッドの中での楽しい読書は、悲しいかな手がかじかんで
徐々に短縮されて行くのです・・・。