1/26/2015

露伴のはたき





 はたきというと、子供の頃のおぼろげな記憶止まりで
成人してから実際に使うことがありませんでした。

けれど、毎日埃を拭き取るような几帳面さは私には無し。

「ちょっと使ってみようかな・・・」と前々から気になっていたこの羽根ばたき、
あと¥1500で送料無料という買い物の際、
ちょうどこれが同等の値段で、買ってみることに。







 届いてすぐに、あちこちを軽くはたいてみました。


 柄はプラスチックで、羽はダチョウ、70㎝ほどのものですが
まずとても軽い!
 そして大変に使いやすい!

扉の桟の部分にも軽々届き、なでるようにするだけで簡単に埃がとれます。

何より良かったのが、いつもいろいろと散乱している机の上。

 はたきの羽が柔軟なので、小さな置物も倒れることなく
埃だけを美しく取り除いてくれる!

しばらくして床に誇りが落ち着いてから掃除機をかければ、部屋はスッキリです。









 このはたきをかけながら、思い浮かんだのが
幸田文の「あとみよそわか」という随筆。

父の幸田露伴から掃除の手ほどきを受けた時の回想ですが、
これが本当に面白い。

そして、登場する露伴の言葉のいちいちが、深く心に刺さってくるのです。
刺さると言っても、心地よい痛みで、宝物の台詞の数々。





何からやる気だと問われて、はたきをかけますといったら言下に、

「それだからまちがっている」と、一撃のもとにはねつけられた。

整頓が第一なのであった。

「その次になにをする。」考えたが、どうもはたくよりほかに無い。

「何をはたく。」「障子をはたく。」「障子はまだまだ!」私はうろうろする。

「わからないか、ごみは上から落ちる、仰向け仰向け。」やっと天井の煤に気が付く。

長い采配の無い時には仕方がないから箒で取るが、

その時は絶対に天井板にさわるなという。

煤の箒を縁側ではたいたら叱られた。

「煤の箒で縁側の横腹をなぐる定跡は無い。

そういうしぐさをしている自分の姿を描いて見なさい、みっともない恰好だ。

女はどんな時でも見よい方がいいんだ。

はたらいている時に未熟な形をするようなやつは、

気取ったって澄ましたって見る人が見りゃ問題にゃならん」










紹介したい言葉はたくさんありますが、もうワンフレーズだけ。


「しかし埃はたまる、たまるからその時は羽根の塵払いをつかえ、

羽根の無い時にはやつれ絹をつかえ、絹が無い時にはしら紙のはたきをつかえ、

それも無い時にはむしろ埃のまんまで置いとけ



露伴も羽根のはたきを推奨していますね(笑)。
しかし、面白い人です。

久しぶりにこの本を出してきたら、しばらく読みふけっていました・・・
幸田文の美文も露伴のエピソードも、極上です。


さてこの羽根のはたき、
 露伴のはたきと呼んで、日々楽しく使うこととしよう。